世界という夢の設計図

五元素・三グナ・そして世界思想全体とつながる構造の話

この世界はどのようにして起きているのか? 

こちらの記事では世界の微小的(ミクロ)な現象の意味を考察する、という意味ではなく、対局的・全体的な(マクロ)世界の運動の構造について説明していきます。

たとえば、今日あなたに起きた出来事の良し悪しを占うとか、あの人がどうだとか、この出来事の意味は何だとか、そういうミクロの解釈を増やすための話ではありません。

もっと大きく、世界という夢がどういう仕組みで動いているのか。
心とは何か。意識とは何か。なぜ個が生まれ、なぜ揺れ、なぜ苦しみ、なぜ静けさへ戻るのか。
そういう骨格の話をします。

また、これらは私が探求者だった頃に非常に役に立った概念だったから、
パラトゥリクスでもぜひご紹介しようと思いました。

当時私は、真理実現の道を進む途中で、アドヴァイタやインド哲学を学んでいた時期があり、
また、個としての私の気質を研究する上で、ジョーティッシュ(インド占星術)、また、西洋占星術を学びました。

これらは、人を占うためでも、自分の運命を探るためでもなく、個の私の潜在的傾向(ヴァーサナー)を分析することで、瞑想や明け渡し、また必要なマントラや祈りの方向の理解にも繋がったためです。

ここは誤解されやすいので先に言うと、占星術や気質分析というのは、未来を当てる道具ではなく、心の癖の地形図のようなものです。
地形図があると、なぜ自分が同じ場所で転ぶのか、なぜ同じ反応を繰り返すのか、その構造が見える。
すると、明け渡しや観照が、ただの精神論ではなく具体的な実践として進みやすくなる。

ただし、インド哲学では五元素、西洋では四元素と種類が違うのは、空の概念を入れているかどうかの違いだけです。
基本的には、同じものを指しているとお考えください。

五元素・三グナ・そして世界思想全体とつながる視点

これは、あなたにマニアックな知識として深めてほしいというよりは、
参考程度に、全体意識の運動はそのようになっているのか、と少しでも参考になればいいなと思ってお伝えします。

さて、私たちが現実と呼んで過ごしているこの世界は、結論からいえば夢のようなものです。

これは世界を否定するための話ではありません。むしろ、世界を生み出している大きな背景的構造に対して、畏怖や驚きをもって向き合っていくのが自然です。

夜に見る夢は、私たちの心や想念によって作られていますが、起きてから見ているこの日常世界も、心・潜在的傾向・意識の運動を軸に形づくられているという点ではまったく同じです。

「寝て見る夢は短編の物語。 日常世界は長編の物語。」

質は変わらず、長さと密度だけが異なります。

ここで言う夢という言い方は、現実は嘘だからどうでもいいと言いたいのではなく、
現実が意識の運動として成立している、という意味です。
夢の中では、見ている自分も、見られている世界も、同時に立ち上がる。
日常もそれと似た構造で、心と意識の運動が前提になっている。

そして、この夢としての世界を起こしている根源は何かといえば、
それは純粋意識そのものであり、視点を広げれば全体意識そのものです。

純粋意識には人格や意思はなく、ただ自然発生的に働き続ける動きとして存在しています。
その働きは宇宙全体で、創造・維持・破壊(変容)という三つのサイクルで展開しています。

この三つは宗教の神話に見えるかもしれませんが、実感としても分かるはずです。
何かが始まり、しばらく続き、形が変わり、やがて終わる。
人間の感情も、人生の流れも、季節も、関係性も、全部この循環をしています。

では、この純粋意識の動きを支えている仕組みとは何でしょうか。

ここで、いよいよ五元素(火・水・土・風・空)が重要になってきます。

五元素を意識の運動として理解する

五元素を、単なる昔の自然哲学の分類だと受け取ってしまうと、この世界観の深さに触れることができません。

真理探求の文脈における五元素とは、純粋意識が自分を体験するために起こしている五つのダイナミクス(動き)のことです。

つまり五元素とは、意識が多様性を生むために用意した五種類の波、という理解が本質に近くなります。

初心者向けにさらに言い換えるなら、五元素は、世界という映画の材料ではなく、世界という映画が動くクセ、世界が展開するパターンです。あなたの心の中でも同じパターンが回っています。

これが腑に落ちると、自分の思考、感情、人間関係、人生の展開まですべてが、なぜそうなっているのか、という骨格が一気に見え始めます。

五元素の基本構造

  • (エーテル):存在の場、潜在性、余白
  • (ヴァーユ):動き、変化、生命力
  • (アグニ):意思、洞察、明晰さ、浄化
  • (ジュラ):感情、受容、柔らかさ、融合
  • (プリティヴィ):形、物質性、具体化、安定

ここから、少し深くそれぞれを見ていきます。

これらはすべて空の働きです。空がなければ他の四要素は働き始めることができません。

初心者向けに言うと、空は背景です。背景があるから文字が読める。沈黙があるから音が聞こえる。余白があるから形が見える。その背景の性質が空です。

これが風の働きです。

ここは体感で分かりやすい。今この文章を読んでいる注意が、別のことを思い出して一瞬ズレる。
そのズレが風です。風があるから展開が起きる。

真理探求が進む人は、この火の働きが強い傾向があります。

火が強い人は、曖昧な話で満足できない。なぜ?本当は?構造は?と突き詰めたくなる。
しかし、逆に火が暴れると、正しさで自分や他人を責めたり裁き焼きやすい。ここも自分観察の材料になります。

これらは水の作用です。

探求や浄化で涙が出るのは、水が働いているからです。理解で進む人もいますが、最終的に固さがほどけるところに、水が必要になることが多い。

土は五元素のまとめ役ともいえます。

土は重い。遅い。だが確実です。分かっているのに行動に移らない、という時は土が弱い。逆に土が強すぎると、形に固執して動けなくなる。これも五元素のバランスの話になります。

五元素の本質

五元素は世界を構成している素材であり、同時に私たちの内側で起きている、潜在的傾向(ヴァーサナー)心の仕組みでもあります。

しかし、最も重要なのはここです。

五元素は本当のあなたではありません。
あなたは五元素よりも前、その背後にある純粋意識の静けさです。

五元素の動きをただ通り過ぎる波として見始めると、人生は驚くほど透明に感じられてきます。

しかし五元素だけでは世界の説明は完結しない

ここで登場するのが、三グナ(guṇa)です。

五元素が素材・構造だとすれば、グナは心の動き方・世界が展開する方向性そのものです。

グナを理解すると、
・なぜ今日は軽いのか
・なぜ昨日は重かったのか
・なぜ突然理解が深まったのか
・なぜエゴが強く出てしまうときがあるのか

これらすべての理由が見えてきます。

また、年代や幼少期・青年期・中年期・老年期において、個の私たちの気質や性格や考え方がまったく別人のように変化するのも、こういったわけです。

三グナの基本

三グナとは、世界を動かしている三種類の性質です。
サットヴァ(純質):光、調和、理解、静けさ
ラジャス(動質):動き、欲望、思考、追求
タマス(惰質):重さ、停滞、無知、眠り

グナは性格ではありません。
その瞬間の意識状態の色のようなものです。

五元素が波の種類だとすれば、グナは波の質感です。

グナの詳細

サットヴァ(Sattva
理解、静けさ、透明さ、直観。気づきが鋭く、心が軽く、世界が自然に見える状態です。
探求でのブレイクスルーはほとんどサットヴァのときに起きます。
ただし優しい特別性になりやすい点は注意が必要です。

ラジャス(Rajas)
探求初期から中期を強く動かすエネルギーです。
・思考が速い
・答えを求め続ける
・行動力が強い
・不安や焦りも生まれやすい

ラジャスは探求のエンジンであり、悪ではありません。

タマス(Tamas)
重さ、暗質、無気力、落ち込み、眠り。
敵ではなく、カルマが浮上する段階でもあります。

多くの探求者にとって浄化が起きるのも、根深いタマスが妄想と同一化を倍増させるからです。
私は間違っているという声はタマスの声であり、あなたの本質ではありません。

三グナは探求にどう作用するのか

簡単に言えば、探求はこう動きます。

  • 初期
    ラジャスが強い
    サットヴァが入り理解が起きる
  • 中期
    サットヴァ優勢
    タマスが浮上し浄化
    心が整う
    サットヴァが増える
  • 深まり
    サットヴァさえ私ではないと見えてくる
    すべてのグナが夢の天気に見え始める
    純粋意識の静けさが前景に現れる

シンプルにいえば、段々と心をクリアにしていくために、様々な人生体験が起きるというわけです。

五元素と三グナはインド哲学だけの話ではない

ここまでの説明を読んでも、やはりこれは特別な話で、東洋思想だけの話では、と思う方がいるかもしれません。

しかし実際には、五元素や三グナ的な世界観は世界中の古代思想に共通しています。

以下に、その広がりをまとめます。

世界の教えと五元素・三グナの共通性

  • 【1】サーンキヤ哲学(インド)
    五元素・三グナの本家。すべての元祖はここから始まりました。
  • 【2】ヴェーダーンタ(アドヴァイタ)
    世界はブラフマンの現れとして見られ、五元素・三グナはマーヤーの性質として扱われます。
    パラトゥリクスでもヴェーダーンタ的な線から真理を扱うことはどうしても多くなります。
  • 【3】パタンジャリ・ヨーガ
    心の静まりはグナの静まり。チャクラやナーディの説明にも五元素が使われます。
  • 【4】タントラ(密教・シヴァ派)
    クンダリニー上昇と五元素の統合。エネルギー体系として極めて詳細。
  • 【5】アーユルヴェーダ
    五元素+三グナを心と身体の構造として実際に応用しています。
  • 【6】初期仏教・アビダルマ
    五大(地水火風空)を採用。構造はほぼインド哲学と同じです。
  • 【7】チベット密教
    チャクラ体系と五元素が完全にリンク。瞑想法も五大を軸に組まれています。
  • 【8】道教(タオ)
    五行(木火土金水)は体系が異なりますが、世界は五つの力の相互作用で動くという発想が類似。
  • 【9】ギリシャ哲学(エンペドクレスからアリストテレス)
    先程、西洋は四元素を中心にしていると書きました。火・水・風・土。
    ただし、アリストテレスが第五元素(エーテル)を追加したため、ほぼ同じ構造になります。
  • 【10】カバラ(ユダヤ神秘主義)
    四元素+霊(スピリット)。五元素の世界観に極めて近いです。
  • 【11】ケルト・北欧・シャーマニズム
    大地・水・火・風・霊の五つの構造。これも驚くほど一致します。
  • 【12】ユング心理学
    さて、心理学でも四元素を心のアーキタイプとして再構築されています。
    集合的無意識や、人間の無意識の動きを説明する枠組みになっています。

世界全体を貫く共通の型として参考にするのが真理探求者にとって無駄ではない

こうして見ると、世界中の古い教えが、世界は五つの力で動き、三つの性質によって展開する、という構造を共有していることに気づきます。

・五つの素材(五元素)
・三つの性質(グナ)

この八つの組み合わせで、世界のあらゆる出来事、心の動き、人生の変化が説明できるという感覚は、古今東西の思想をつなげていくほど強まっていきます。

そして最も大切なのは、この仕組みをいくら理解しても、本当のあなたは五元素でもグナでもない、という視点です。

なので、私は五元素と三グナを徹底的に学び、その知識を深めるより、これは夢の構造を説明するための地図でしかないことをお伝えします。

あなたはその地図の紙そのものではなく、地図が描かれる前の純粋意識そのものだから。

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