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物語・エッセイ
不滅の意識
閉館を告げるベルが、何度か鳴った。 窓の外は、ずいぶん暗くなっていた。 館内にいた人たちが本を閉じ始めた。読みかけの沈黙。伏せられた本はどれも、まだ誰かの途中を抱えたまま、机の上に置かれていた。 出口へ向かうと、扉の前には返却カウンターがあ... -
物語・エッセイ
創世記 ④ 扉を叩く音
何かを失う。 それは人かもしれない。 場所かもしれない。 これまで自分を支えていた未来への希望かもしれない。 失った直後は、そのことだけで頭がいっぱいになる。どうすれば戻せるのか。何が間違っていたのか。一体この苦しみは、いつ終わるのか。考え... -
物語・エッセイ
見つかっていないものを探しに
空中に咲く花があると言われても、たぶん誰も信じないだろう。 根も葉もないとは、まさにこのことだ。土に触れてすらいない。 こういう話は、すぐに「ないもの」として片づけられる。 だが、湖の底に、まだ見つかっていない巨大な生物がいると言われると、... -
物語・エッセイ
夢から覚めたという夢
朝、夢から覚めた直後、見ていたはずの世界が急速に消えていくことがある。 どこか知らない町を歩いていた。たしか乳白色の机の引き出しを開けると、その向こう側には別の町があり、さらに奥の方に海がみえた。 空は薄い緑色で誰かの声が、自分の声として... -
物語・エッセイ
創世記 ③名前という契約
どこか懐かしいような、天井がある。 部屋のどこかから、一つの音が飛んできた。 「○○○」 そこにあったその身体が、わずかに震え、顔を動かした。 向こう側で、誰かの顔が笑っている。 すると、つられるようにその身体も口を大きく開いて笑った。 身体の奥... -
言葉と構造
熟睡中の空白と、消えない存在
私たちは「3つの意識状態」を経験している 今回は、私たちは毎晩知らないうちに世界を失っているというお話になります。 起きている時は日常と呼ばれる現実があり、眠ると夢の世界が現れます。 さらに深く眠り熟睡に至ると、その夢さえも消えてしまいます... -
物語・エッセイ
悟ったはずなのに、なぜまた探すのか
「メガネがない」 あなたは慌てて、机の引き出しを開ける。 乱雑に積まれた雑誌をどかし、次に鞄の中を探る。そういえばと、昨日着ていた上着のポケットにも手を入れる。 「ない!」 メガネがないとメガネを探すことさえ難しい。ぼやけた視界の中で、部屋... -
物語・エッセイ
「あなたはすでにそれだ」と言われたのは、誰なのか
「あなたはすでにそれだ」 探究をしていた頃、この言葉に出会うたびに私は少し安心した。 探していたものは、ここにある。もう、遠くまで行かなくていいし特別な何かにならなくてもいい。これでようやく長い旅を終えられるような気がした。 けど、そのすぐ... -
物語・エッセイ
月と月の談。沈黙以前
「ねえねえ、ママ。どうして月が二つあるの?おかしいよ」 夜空には本当に月が、二つあった。ひとつは遠く、ひとつは近い。 だがよく見ると、片方の月だけがほんの少し遅れて動いているようにも見えた。 「あのね、あれはまったくおかしくないの」 母親は... -
物語・エッセイ
聖なるかな
夜明け前、ひとつの行進が始まった。 先頭を歩いていたのは、スーツ姿の男だった。 ネクタイは少し曲がり、片方の靴ひもがほどけていた。男は胸に白い花を抱いていた。花びらの先には、まだ露が残っていた。男はときどき目をこすったが靴ひものことには気...
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