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物語・エッセイ
月と月の談。沈黙以前
「ねえねえ、ママ。どうして月が二つあるの? おかしいよ」 夜空には、本当に月が二つあった。 ひとつは遠く、ひとつは近い。 けど、よく見ると、片方の月だけがほんの少し遅れて動いているようにも見えた。 「あのね、あれはまったくおかしくないの」 母... -
物語・エッセイ
創世記 ④ 扉を叩く音
何かを失う。 それは、人かもしれない。 場所かもしれない。 これまで自分を支えていた未来への希望かもしれない。 失った直後は、そのことだけで頭がいっぱいになる。 どうすれば戻せるのか。 何が間違っていたのか。 一体この苦しみは、いつ終わるのか。... -
物語・エッセイ
夢から覚めたという夢
朝、夢から覚めた直後、見ていたはずの世界が急速に消えていくことがある。 どこか知らない町を歩いていた。 乳白色の机の引き出しを開けると、その向こう側には別の町があり、さらに奥の方に海がみえた。 空は緑色で、誰かの声が、自分の声として聞こえて... -
物語・エッセイ
創世記 ③名前という契約
部屋のどこかから、一つの音が飛んでくる。 「○○○」 一つの身体が、わずかに顔を動かす。 誰かが笑う。 もう一度、同じ音が飛んでくる。 「○○○」 今度は、先ほどよりもはっきりと身体が振り向く。 まだ、その音が何を意味しているのかは分からない。 音は... -
物語・エッセイ
悟りについて ② 熟睡中の空白のあなた
私たちは毎晩「3つの意識状態」を経験している さて、前回の話の続きです。 今回は、あなたは毎晩、知らないうちに世界を失っているという話です。 起きている時は日常と呼ばれる現実があります。 眠ると夢の世界が現れてさらに深く眠り、熟睡に至るとその... -
物語・エッセイ
私の探究遍歴 ① トイレの花子さんと、心が世界に触れた日
探究のはじまりの記憶 ようこそ、パラトゥリクスへ。 ところで、みなさんの一番古い記憶は、どのようなものでしょうか? はっきり覚えている人もいれば、曖昧なものとか、断片的にしか覚えていない人もいるかと思います。 私の場合、一番初めの強烈に... -
物語・エッセイ
悟ったはずなのに、なぜまた探すのか
「メガネがない」 あなたは机の引き出しを開ける。 積まれた本の下を見る。鞄の中を探る。昨日着ていた上着のポケットにも手を入れる。 ない。 メガネがなければ、メガネを探すことさえ難しい。 ぼやけた視界の中で、部屋の形が少しずつ不機嫌に歪んでいく... -
物語・エッセイ
「あなたはすでにそれだ」と言われたのは、誰なのか
「あなたはすでにそれだ」 探究をしていた頃、この言葉に出会うたび、私は少し安心した。 探していたものは、ここにある。 もう、遠くまで行かなくていい。 もう、特別な何かにならなくてもいい。 ようやく長い旅を終えられるような気がした。 けど、その... -
物語・エッセイ
聖なるかな
夜明け前、ひとつの行進が始まった。 先頭を歩く者は、胸に花を抱いていた。 その後ろには、スーツを着たまま眠そうに歩く者がいる。 刃を握った者。 王冠をかぶった者。 手錠をつけられた者。 まだ土の匂いが残っている、墓地から起き上がったばかりの者... -
物語・エッセイ
祝詞――喪失、おめでとう
これが誰に向けて書かれたものなのか、今でもよく分からない。 かつて何かを失い、世界の隅でうずくまっていた自分へ向けたものなのか。 これから何かを失う、親愛なる誰かへのはなむけなのか。 缶ビールを何本も空けた夜、酔った勢いで書き残した文章のよ...
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