私ゲーム 序章 甘さと苦さを知った日

これは私が小学校一年生の頃の思い出の話です。

当時の私は自転車に乗れるようになったばかりで、楽しくてよく走り回っていました。

ちょうどその頃ドラゴンボールにもどハマりしました。とくに悟空がスーパーサイヤ人になった時の衝撃は今でも覚えています。すごい!なんなんだこれは、と。

ただ、連載中なので次の話をすぐに見ることはできません。続きは来週。

私はそれを待てなかった。

そこで何をしたかというと自分で続きを作ることにしました。そうです。私が作者になることにしたのです。
しかし、小学一年生で漫画を描くほどのスキルがなかったので、頭の中で勝手に続きを作りました。

そしてその時ちょうどよかったのが自転車に乗ることでした。私は近所にある駐車場の中を自転車で走りました。同じところをぐるぐるする単純な動きの方が、頭の中の物語に集中するのにちょうどよかったのだと思います。

悟空はこのあとこうしよう。次はこういう展開を起こそう。あ、もっとこういうキャラが現れたら面白いかもしれない。もしこんな技を使ったらどうなるだろう。

私は何時間も飽きずに同じ場所を回っていました。

それ以前の私にとっての世界って、わりと目の前で起きているものがそのまま世界だったように思います。

外へ出れば色々と遊ぶものがあって、顔見知りの人がいて公園や駐車場があります。

ところが目の前にはないものを頭の中で作って、そこに入り込んで遊べることを覚えました。

しかも自分で作っている世界なのに、その続きを本気で気にすることができます。自分で敵を出して、自分で展開を作っているのにもかかわらず、とても夢中になれたのです。

近所には、高校生くらいの歳の離れたお姉ちゃんがいました。

その人は近所でたまに会うといつも私に声をかけてくれたり話を聞いてくれたり、子供扱いして遠ざけるような感じがなくて優しい人でした。
なんというか他の人より少し上品な雰囲気もありました。

私はその人の前で、たぶん初めて「照れる」とか「恥ずかしい」という感覚を知った気がします。

それまで普通に続いていた自分が、その人の前ではなぜか普段通りではいられなくなって、身体の内側から急に自分という存在や鼓動を意識するような感覚がしたのを覚えています。

ある日、私がいつものように自転車に乗ろうとしていると、近くにそのお姉ちゃんと同級生の女の子がいました。

すると、その子が私を見て、

「ねえねえあなた、ずっと駐車場でぐるぐる回って何してるの?」

という感じで聞いてきました。

お姉ちゃんは「え、それ言っちゃうの?」というような感じで吹き出すように笑いました。

そうです。

思えばお姉ちゃんが住んでいる家は、駐車場のすぐ隣にあったのです。

私はこのとき初めて、どうやら近所では「あの子、いつも自転車で駐車場を何時間もぐるぐる回ってる」と知らないところで話題にあがっていたことを知りました。

その時のお姉ちゃんの目にはじめていつもと違うなにかを感じました。

もちろん本当はどう思っていたのかは分かりません。

お姉ちゃんに、私は自転車が好きでずっと乗っている子だと思われるだけなら、たぶん何とも思わなかったでしょう。ドラゴンボールの続きを考えていたことを知られても別に恥ずかしくありません。

また自分でも「ちょっと変わったことしているな」と分かってやっていたなら、まだ言われてもよかったのかもしれない。

でも私にとっては、誰かに見せるためのものでもなく、自分の中だけの自然な行為であり秘密のものでもありました。

私は言われるまで我を忘れるほど夢中になって、自分が何時間も同じところをぐるぐる回っていたことさえ、ほとんど意識していなかった。自分でも気づいていなかったそんな部分を人に知られていた。そしてよりによって私の知らないところでお姉ちゃんの方が先に知っていた。

その事実に私はどうしようもなく居ても立ってもいられなくなったのです。

私は何も言わずその場を逃げるようにして立ち去りました。

たしかに今思えば家から見える駐車場でそんな子供がいたら、気になるし奇妙な光景なのはわかります。

そしてその日の夜、今度は「人から見た自分」の続きを私は頭の中で作り始めていました。
こう思われたかもしれない・・いや、もっとこうなのかもしれない・・。

一緒にいた同級生の子とはその後も普通に話せたのに、それ以来お姉ちゃんとはなんだか気まずくなってだんだん話さなくなりました。

当然それ以降私は自転車で駐車場をぐるぐる回ることをやめました。

しかし自転車も駐車場もなくてもその頃にはもう、「頭の中で続きを作るやり方」は完全に覚えていました。

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この記事を書いた人

パラトゥリクス管理人。真理探究、悟り、意識について書いています。

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